第26回白鳥省吾賞 優秀賞受賞
2025年02月16日
【第26回白鳥省吾賞 優秀賞受賞】
帰り道 中川 泰明
傘を持ってくればよかった
天気予報は外れたみたいだ
ウケるよな
校庭にできた水溜り
揺れる自分が浮かんでる
一緒に帰ろう
声をかけてきたクラスメイトは
よく知らないあいつ
なんで誘ってきたんだろう
あいつだって傘持ってないじゃん
絶対ひとりでいいのに
川沿いの小石を蹴っ飛ばす
ぐちょぐちょのローファーかったるい
強まっていく雨足に
なんとなく溜息
傘を持ってくればよかった
横断歩道を並んで渡る
ぜんぶが滴っている
はしゃぐあいつ
全然わからん
ヤバいな会話が続かない
隣であいつは気にもしない
何を思っているんだか
傘を持ってくればよかった
コンビニの近くまで来たら
雨はぽつぽつ
思ってたのと違くない?
雲間から太陽が覗いた
あっ虹
あいつと声が重なって
思わず互いに噴き出した
顔を見合わせゲラゲラ笑う
やっぱり
傘を持ってこなくてよかった
この詩が第26回白鳥省吾賞の小・中学生の部にて優秀賞を受賞しました。
白鳥省吾氏は現在の宮城県栗原市に生まれ、人間愛や日常性をテーマに民衆派詩人として活躍しました。下のリンクは栗原市の受賞結果ページになります。
https://www.kuriharacity.jp/w060/010/010/010/090/PAGE000000000000007135.html
受賞した65期中3の中川泰明くんのコメントです。
「地続きで嘘のない等身大の言葉をしたためました。この詩は人間愛と分断社会をテーマに、それらを実体験にくるんで、日常の一風景に落とし込んだものです。なんの変哲のない、と感じていただけたら最高です。」